チャッキーの小姑と秘密の部屋

ホラー映画の感想&前売り特典の記録

「チェンジリング」あらすじ(がっつりネタバレあり)と感想

 

ブログの更新が滞っているあいだに、季節はすっかり梅雨ですね。

雨が多いと出かけるのが億劫になりますが、家でゆっくりDVDを観るのにはもってこいの時期。

というわけで、観たばかりのホラー作品について、詳しいストーリーと感想を書きたいと思います。

 

チェンジリング

アンジェリーナ・ジョリー主演のほうではなく、1979年(日本公開は1980年)のホラー映画です。

監督のピーター・メダックはハンガリー出身で、「蜘蛛女」や「スピーシーズ2」、その他テレビドラマの監督も多数手がけている。

俳優として「ビバリーヒルズ・コップ3」などにも出演しているらしい。

主演は「パットン大戦車軍団」で主演を務め、アカデミー賞の主演男優賞を受賞したものの、辞退したというジョージ・C・スコット。共演のトリッシュ・ヴァン・ディーヴァーとは、私生活で夫婦でした。

 

では、結末までストーリーを追っていきます。

 

家族旅行中に、雪でスリップしたトラックが突っ込んできて、妻と娘を亡くしたジョン。しばらくは失意の底にあったが、高名な作曲家である彼は、やがて大学の教授として招かれたシアトルに移り住む。
一晩中ピアノを弾ける家を探したところ、歴史保存協会のクレアという女性が、古びた立派な屋敷を紹介してくれる。その屋敷には、12年間誰も住んでおらず、博物館にするという計画もなぜか立ち消えになったという。

ジョンは屋敷を気に入り、そこで暮らし始めるが、数々の奇妙な出来事を経験していく。誰もいないのにドアが開いたり、家中の水道から勝手に水が流れだしたり、毎朝6時には大きな物音が響きわたり、30秒が過ぎるとパタリとやんだり…。

 

ここまでの描写は、ギャーッというような怖さはなく、「おや、おかしいな」という程度だけど、静かで正統派の作り込みです。この作品、特殊効果やスプラッターに頼るのではなく、緻密な演出や音響効果にこだわっているそう。静かにぞわぞわさせられて、いい感じです。

 

歴史保存協会を訪れ、これらの怪奇現象について相談すると、協会員の一人のミニーという女性が、「あの家には誰も住むことはできない。家が人を拒むのだ」と言い放つ。

 

このミニーが、ジョンとクレアに敵意むきだしで、とても感じが悪い。なんなんだ、このおばさんは。

 

ある晩、ジョンは隠された屋根裏部屋があるのを発見した。蜘蛛の巣だらけの部屋でオルゴールを見つけ、ジョンは愕然とする。流れてきた音楽は、ジョンが作曲したばかりの曲そのものだったのだ。

 

このオルゴールのシーン、いちばんゾクッときました。


ジョンはこの屋敷は人を拒んでいるのではなく、何かを訴えようとしているのではないかと考える。クレアに相談すると、彼女はその屋根裏部屋を見たがり、ジョンは案内した。そこには、1909年に子どもの字で書かれた日記や、小さな車椅子などが残っている。どこか奇妙な部屋だ。二人が出ていくと、誰もいない部屋で車椅子に動きが…。

 

屋根裏部屋に子どもの日記、車椅子。じわじわと恐怖が募っていきます。車椅子が勝手に動くシーンは、あまりに地味な動きだったので、うっかりすると見過ごしそう。


ジョンは歴史保存協会の記録で屋敷について調べ始めた。前の持ち主は建築家で、1965年に購入し、67年に売却していた。協会は同年にカーマイケル議員の財団に援助を受けて、屋敷を購入した。が、古い記録がなぜか見つからない。協会員のミニーの話によると、1909年頃に屋敷に住んでいたのは、バーナードという人物で、娘と息子がいたらしい。だが、何らかの事故があり、1909年に屋敷を売却した。
当時の新聞を調べると、バーナードは医師で、7歳の娘コーラが家の前でトラックに轢かれ、病院で亡くなったとあった。
ジョンはコーラと自分の娘のキャシーがどちらも交通事故で亡くなっていることから、奇妙な縁を感じる。この屋敷は自分に何を訴えようとしているのだろう?

 

霊の正体は女の子で、幼い娘を亡くしたジョンのもとに現れたのかー、とまんまと思わされました。ところがですよ……


思いを立ち切るように、ジョンは娘がよく遊んでいたボールを河に投げ捨てる。しかし、屋敷に帰ってくると、さっき捨てたはずのボールが階段から落ちてきた…。

 

ベタだけど、怖い。地味に怖い。


ジョンは霊媒師を招き、屋敷に棲む霊との接触を試みる。霊媒師の問いかけに対し、霊はコーラではなく、ジョゼフと名乗り、ジョンに激しく助けを求める。だが、なぜ安らげないのかという質問に、ジョゼフは答えなかった。

 

ここ、霊媒師がいわゆる自動書記を行なうんですが、あまりに激しく手が動くから、ちょっと嘘っぽい。

ジョンは超常現象研究所みたいなところで霊媒師を紹介されたんだけど、そこの所長(?)も、「霊媒の99%はインチキだ」と言ってたし。

 

後でジョンが降霊会の録音を聴き返すと、そこにはジョゼフの声が残されていた。ジョゼフは「歩けない…僕の部屋…父さん…牧場…メダル…セイクレッド・ハート…死体…井戸…僕の名前はジョゼフ・カーマイケル…」と話していた。セイクレッド・ハートとは、かつて近くにあった孤児院の名称だった。

 

はい、霊媒師は残り1%の本物でした、ゴメンナサイ。

ここに来て急展開ですね。カーマイケルといえば、議員と同じ名前です。

おまけに霊は女の子じゃなかった!

そして謎のキーワードが盛りだくさん! どうする、ジョンよ!!

 

歴史保存協会のミニーは、ジョンたちが屋敷について調べていることを、議員のカーマイケルに密かに報告していた。

 

はい、出たー。ミニー、嫌なオバサンだと思ったら、やっぱりか。


ジョンたちは、かつてあの屋敷をカーマイケルの父親リチャードが購入したことを知った。リチャードの息子は3歳で萎縮性の関節炎にかかり、その後スイスに送られ治療を受けたとされている。1906年にリチャードに付き添われて渡欧し、第一次大戦後にアメリカに帰ってきたと記録があった。実際には、リチャードが病気の息子を殺し、孤児を身代わりに海外へ送り、替え玉とは気づかれない歳になってから帰国させたのだ。果たしてカーマイケル議員は、本当の息子が殺されたことを知っているのだろうか?
リチャードの妻はスペンサー財閥の一人娘で、若くして亡くなっている。父親のスペンサー氏も1905年に亡くなった。ジョンは故スペンサー氏が井戸のある牧場を所有していたことを突き止めた。スペンサーの遺言を調べると、孫のジョゼフがすべてを相続することになっており、娘婿のリチャードには息子が成長するまでの管理権しか与えられていなかった。さらに、ジョゼフが成人する前に死んだ場合、全額が寄付に回されることになっていた。リチャードは金を手に入れるために、病気がちで歩けない息子を犠牲にしたのだ。

 

この辺、真実が一気に明らかになりますね。

チェンジリング(取り替え子)」というタイトルの意味も、ここで判明します。

要するに、カーマイケル議員の父親は、財産目当てで資産家の娘と結婚した。ところが、義父に気に入られず、嫁が死んでも自分には1セントも遺産が入ってこない。そこで足が不自由な息子を風呂で溺死させ、死体を隠し、少年を孤児院から引き取って(つまり、この孤児がカーマイケル議員)、足の治療という名目で海外に行かせた。その間、リチャードはスペンサーの財産を自由にできるわけです。

お金のために息子を殺すとは、とんでもない最悪な父親です。そういうところを見抜いていたから、故スペンサー氏はこの娘婿を嫌っていたのでしょう。


井戸があった場所には、今では家が建てられていた。が、降霊会のあった夜、その家に住む娘は、床下からこちらを見つめている少年の悪夢を見ていた。
ジョンたちは家の床板を剥がす許可をもらい、掘り進めていくと、やがて人骨が見つかった。ジョンは警察に誰の骨か心当たりがあるかと訊かれ、ないと嘘をつく。真実を明らかにするには、もっと証拠が必要だ。ジョゼフの言っていたメダルが鍵になるだろう。
再び一人で床下を調べていると、地中からするりとメダルが現れた。メダルにはジョゼフの名前と洗礼を受けた日付が刻まれていた。

 

このメダルが土の中から出てくるシーンも、なかなかに不気味でした。霊の姿はまったく映さなくても、かえって凄味のある映像になるものですね。


ジョンはカーマイケル議員に会いに行き、メダルと死体のことを話すが、カーマイケルは相手にしない。しかし、議員の胸には同じメダルが下げられている。カーマイケルは警察に連絡をとった。
ジョンのもとにカーマイケルに遣わされたデ・ウィット警部補がやって来て、脅しをかける。メダルを寄越せというのだ。さらに、クレアは突然、協会を解雇された。二人にはもう打つ手がない。
ジョンが屋敷の鏡を見つめていると、急にガラスが割れ、デ・ウィット警部補の死に顔が見えた。そこへクレアから電話があり、帰りに謎の交通事故でひっくり返った車を見た、デ・ウィット警部補が死んでいる、と話した。

 

デ・ウィットの死に顔が見えるシーン、唐突でギョッとしました。ここだけ雑な感じもしますが、緩急ってやつでしょうか。


ジョンはカーマイケル議員と対面し、調べあげた事実を語り聞かせる。議員はそれを認めようとせず、たかり扱いし、金で解決しようとする。カーマイケルは父親を心から尊敬していた。ジョンは証拠となる降霊会の録音テープや資料を置いて、議員のもとを立ち去る。
クレアが屋敷を訪ねると、車椅子が暴走し、追いかけてきた。ジョゼフの霊の怒りか、家全体が揺れている。ジョンは転倒し、屋敷に炎が燃え広がり始めた。と、そこへカーマイケル議員が現れ、階段を上っていく。階段は崩れ落ち、ジョンとクレアは逃げ延びたが、議員は戻ってこなかった。
だが実は、生身の議員は執務室にいた。彼はあのメダルが揺れるのを見つめながら、ジョゼフの悲痛な叫びを聞き、真実を知って心臓発作を起こし、息絶えたのだった。

 

カーマイケル議員が火事で死ぬのかと思いきや、実体は執務室にいて心臓発作を起こすところ、ひねりが利いています。結局、カーマイケルは父親を信じていただけなのに、こんなふうに死ぬなんてちょっと気の毒にも思いますが、汚い手も辞さないところはリチャードと同じなので、仕方ないか……。


屋敷は全焼し、車椅子の残骸が見える。そしてあのオルゴールがひとりでに開き、メロディを奏で始めるのだった…。

 

ここで例のオルゴールが再登場です。

最初にジョンがこの曲を作ってピアノで弾いていたとき、クレアは「素敵な曲ね。子守歌かしら」と言っていました。幼いジョゼフ少年は、この美しい子守歌を聴きながら、ようやく安らかな眠りに就くのでしょう。

悲しくも美しいエンディングです。

 

派手さはないけど、クラシカルで丁寧に作られた秀作だと思います。ミステリーとしても楽しめました。血みどろの残虐描写に辟易しているホラー映画ファンにお勧め。

ただ、なんで午前6時に不気味な音が響いたのか、そこだけわからずじまいです。

ジョゼフ少年が息絶えた時間だったとか?

何か見落としてるのかなあ。いずれまた見返したときに、気をつけておこう。